人生に必要なものは?
秋の展覧会に出展したときのこと。
お仲間のT老人は、初日の飾りつけの際皆に、「私はお役に立てないのでこの人が代わり
にスタッフとして参加します」と、一人の屈強な若者を紹介した。
たぶん、彼はアルバイトとして日当を払って雇われたのであろう。会の力仕事を一手に引
き受け、我々は大いに助かった。
また会期中、私はそのT老人と組んで受付をすることになった。
再び、T老人は「この人が私の変わりに受付を担当します」と、今度もやはりバイトの若
い女性を連れてきた。3人になったので私はとても助かった。
聞くところによると、T老人は実業家で成功し、多くの財産を残したお金持ちであった。
私はやはりお金の力はすごいと思った。自分の体が衰えてもお金があれば、人を雇ってで
も、展覧会に参加し、好きな趣味を続けることができる。世の中、ある程度の困難はお金
で解決できるのではないかと考えた。
後日、ある集まりで人生に必要なものは? という話になった。
それぞれ、一に健康、二に心の平安、三に家族とか、その他生きがい、愛、金とかの言葉
が飛び交った。
私はこのT老人の話をしてみた。
すると、ある人が、お金はないよりはあった方がいいけど、万能ではない。この場合は周
囲の人に愛があれば、このT老人に無償で手を貸して、みんなの力で展覧会参加を果たせ
たはず。というのであった。
私はなるほど、と感心した。T老人に徳があれば協力者が現れ、お金で解決しなくても思い
は達成する。ずっとその方が美しいと思った。
ちなみにチャップリンの言葉に、人生に必要なものは、一に愛、二に勇気、三にわずかな
お金というのがある。
至言であろう。 |