シリーズ リポーター奮闘記
人間相性ね
会社は横浜駅周辺、相鉄沿線、京急沿線のエリアに配布する3つの媒体紙を出していた。
フリーペーパーなので広告収入に頼っており、営業の人たちはたくさんいたが、歩合制で
ノルマがあるので結構出入りも激しい。広告が足りないときはフリーランスの営業マンか
ら広告をもらって紙面を埋めることもある。
とりあえず私は営業の人が取ってきたクライアントのところへ一緒にいって取材して広告
文を書くのだが、面白いことに気がついた。
地味でコツコツタイプの人はやはり地道な客が、優しい人には優しい客が、大風呂敷の人
には大風呂敷の客が、やり手タイプにはやり手タイプ客がつくのであった。
そこには見えない糸でつながれた相性のようなものが存在するようだ。
あるとき、フリーの広告マンから取材依頼の電話がかかった。待ち合わせ時間・場所が決
まったが顔がわからない。どんなお顔ですか?とも聞けないし、服装は?も当てにならな
いし…電話口で言いよどんでいると、先方はあっさり、では媒体誌を目立つように持って
立っていてください、という。おーさすが! 厚みのある声といい明快な指示といい私は
どんな人だろうかとあれこれ想像し、なんか見知らぬ人との待ち合わせってロマンチック
だなあと胸をふくらませた。
媒体誌をしっかり胸に抱えた私の目の前で車が止まった。運転席からむくつけき中年の男
性が体をねじって「さあ、乗って!」と声をかける。「はいっ」言われるままに私は急い
で助手席にのりこむと車はすぐ走り出した。
「ちょっと遠くて悪いんだけど30分位走ります」
胸がドキドキしてなんか拉致でもされた気分だった。
そうだ、まだ本人確認もしていないと気がついて、ようやく、二人が名乗りあって落ち着
いたが、後が続かない。よく営業の人は口がうまく人をそらさないというが、このフリー
営業マン氏は極端に無口だった。本当にフリーでやれるほど顧客を持って世間を渡ってい
るのだろうかと疑わしくさえ思った。でもこうしてクライアントをつかんで結果を出して
いるのだからに何も文句はない。
ただ私との相性が悪いだけなのだ。 |