シリーズ 世にも短い物語
年賀状
穏やかなお正月。おせちも食べて私はリビングの日だまりの中で年賀状を読んでいる。
幾枚かめで一通の年賀状に目が釘付けになった。それは今年の干支のついたかわいいは
がきで「ついにあこがれの美容師になりました。一度逢いたいね」と言葉が添えられて
いた。(あ、優ちゃんだ!)私は小学生の優ちゃんの顔を思い浮かべて懐かしさに胸が
いっぱいになった。
私は小学生の頃、とても太っていてしかもチビだったので「チビブタ」のあだ名でいじ
められていた。そんな私の唯一の友達が優ちゃんであり、いじめっ子からかばってくれ
たのも優ちゃんだった。
集団登校の小学校は家が近かった優ちゃんとはいつも一緒だった。私が長い髪を二つに
分けて飾りのついたゴムで結わえていると、優ちゃんはその髪に触れて「しっぽ、しっ
ぽ」とか「ツン、ツン」とかいってからかうので、私は「やだぁ!」と怒りながら頭を
振ると、最後には「カワイイよぉ」と言ってくれるので私はようやく機嫌が直るのであ
った。きっとその頃から優ちゃんは人の髪の毛に触るのが好きだったのだろう。
私達は中学に入ると学校が違い、自然に疎遠になった。高校時代には優ちゃんは東京の
学校にいってしまい会うことがなかった。一度だけ帰省した優ちゃんを見かけたとき、
髪の毛を金色に染めて眉毛を整え、なんとなくケバイ感じがした。
思いもかけない年賀状に、名前のように優しい優ちゃんに会いたくなった。思い切って
印刷されてあるメルアドにアクセスして、渋谷のモアイ像で会おうよ、とメールした。
当日、優ちゃんは5分遅れてきた。細身のジーンズに白いコート、金色に染め、柔らか
くウエーブしている長髪をなびかせて・・・。すっかり細くなった私のことがわからな
いらしくキョロキョロしている。私はあまりにカッコイイ優ちゃんに圧倒されて昔のよ
うに気安く声を掛けられなかった。思わず気取って「優太くーん」と呼んでしまった。
優太くんが驚いたように喉仏をごくんとさせて振り向くと、「あら!」とオネエ言葉を
使った。 |