シリーズ リポーター奮闘記
エステ
広告文の中には客になったつもりで店を紹介する体験リポートの形式をとるものがある。
エステティックサロンなどはよくこの手を使った。リポーターの私が実際にエステを体
験し、どんな感じでどんな効果がでたかを報告するのである。もちろん店の宣伝なので
内容はベタホメ記事とあいなるのだが・・・
タルミ、クスミという名の双子姉妹を過保護に育てた私としては、タダであこがれのエ
ステをしてもらえるチャンス!とばかりに鼻息も荒くこの仕事を引き受けた。
しかし、世の中そんなに甘くはない。
役得できれいになろうなんて了見は通用しなかった。
というのは・・・
まずクリームで化粧を落とされ、蒸気をたっぷりあてられ毛穴を開く。次に特殊クリー
ムでリンパマッサージを施されるのだが説明が長いだけで少しやってあとは省略。ゲル
マニューム温浴も手をつっこんだのは数秒のみ。つまり、すべての行程をほんのさわり
しかやってもらえないのだ。挙句の果てに写真を撮られ、すっぴんで放り出され、ごく
ろうさん、で終わり。
そりゃそうである。あちらはお金を出す立場、宣伝効果抜群の文章を書いてもらえばそ
れでいいのだから。
私は仕事の緊張とお得意さまに粗相のないよう気を遣い、肌にはむしろストレスがかか
り、いいことはなにもなかった。つくづくエステとは自腹を切って客として女王さまの
ように扱われ、リップサービスがあってこそ気分もゆったり、お肌もしっとりなのだと
悟った次第。
思えばそんな最悪状態でも「ツルツルスベスベのお肌に!」とか「うーん、鮮やか、魔
法の指!」とか感嘆詞いっぱいの文章を書かねばならないのだから情ない。
コピーライターとはときには嘘も書かねばならない因果な商売である。 |