話題の「魂萌え」
友人から電話がかかってきた。
「ねえ、『魂萌え』見た?」
「うん、見た、見た。他人事じゃないわね」
最近、NHKテレビで放映されたドラマ「魂萌え」のことである。
ストーリーは平凡な専業主婦が夫の死をきっかけに、夫の愛人の出現、相続問題などさ
まざまな出来事にぶつかり、世の荒波に揉まれてたくまくしく成長していく、というも
の。桐野夏生原作の同名の小説のテレビ化である。
私は小説でも読み、テレビも見た。桐野作品は「OUT」が最初だが、猟奇的な物語で、
ちょっと身が引けた。だからこの作家がこのような作品を書くとは思いもよらなかった。
「魂萌え」は新聞小説だったので、読んでいるうちに面白くなって新聞が来ると真っ先
に読んでいた。
友人も感動したのだろう。電話でドラマの話で大いに盛り上がった。
「一見何事もなく平凡な家庭でもなんか問題を抱えているもんね」「あの主人公は夫を
愛していなかったんじゃないの。だって妙に物分りがいいじゃないの」
そして最後に二人のだした結論は、
「女って結局狭い世界に住んでいるのね。どんな夫でもいるだけで世間の防波堤になっ
ているんだわ」
「でもそれに甘んじているとしっぺ返しがくるのよ。最後に頼れるのは自分自身だけ。
強くならなくちゃあ…」
ということだった。
私は友人には言わなかったが、どんな女にも心の中に鬼が棲んでいるのだと思う。なに
かのきっかけで鬼は姿をあらわし、まるで身を揉むように暴れて残酷な世界にも或いは
慈悲の世界にもひきずりこむ。
女の一生は体の変化とともに姿を変えていくのではないか。
生硬な少女から、柔らかな大人の女へ、そして頑なな老いへと…
変化することはとにかく苦しい。主人公のように中年女が枯れていくのだって産みの苦
しみに近いものがあるのだろう。女はなんとも生き難いものだと思った。
「魂萌え」はその状況を見事に描いていて、欲望むきだしの若いときの鬼、中年の思い
がけないエロスの鬼、エゴまるだしの老年の鬼を炙り出して多くの女性の共感を得た小
説だと思った。 |