朗読会
晩秋のある晴れた土曜日、朗読会へ行った。
同窓の友人からのお誘いで、出演する3人の中の1人も同窓生であった。
場所は桶川駅からバスに揺られていくこと40分の片田舎。横浜からはたっぷり2時間
半かかり、途中から合流したやはり同窓の友人と小さな旅をした気分だった。
バスを降りると2度は気温が低く感じられ、青い澄みきった空が頭上に大きく広がって
いた。菖蒲町というすてきな名前の土地で、川と畑と田んぼ、ところどころ家並みとい
う静かでのどかなところだ。
呼びかけた友人はこの町で書道を教え、文化的な活動の中心的存在の名士である。秋の
文化祭も多くの人が参加して活発だったと聞く。
今回の朗読会も公な活動としては初めてのことなのに100人ほどの人が集まってくれ
たと喜んでいた。
入場料1000円でコーヒーときな粉、抹茶、ゴマ入りのクッキー1袋を頂いた。きっ
と主婦たちの手作りなのであろう。温かいもてなしが嬉しい。集まった人々の多くは地
元の人で作物の収穫の話などが飛び交い和気藹々の雰囲気だ。
私たち応援の同窓生5人は前から2列目に陣取った。
「眠るわけにはいかないわね」
「朗読だから目を閉じて聴いても不自然じゃないわよ」
始まる前はそんな会話を交わしたのだが、始まると眠るどころかぐんぐん話に引き込ま
れた。初めに山本周五郎作「糸車」、続いて平岩弓枝作「居留地の女」、最後にさねと
うあきら作「おこんじょうるり」であった。
こうした会は音楽を入れたり照明を入れたり凝ろうと思えば幾らでも凝ることができる。
今回は素朴さを残した程の良さが保たれている。もっともっとという派手さが先行する
ことなくきちんと限界を心得ているという感じがした。
朗読はあくまで語りであって話芸の講談や落語、ましてや一人芝居ではない。読者が本
の行間を読むように、聞き手は話し手の間や声のトーンで想像を巡らす。
そういった意味で三人共なかなかのレベルであった。
プロではあるがどこかに素人っぽさが残っているという微妙さがこの会場の雰囲気にぴ
ったりなのであった。 |