8/30ののらねこ       文は田島薫



ねこはハードボイルド

今朝出勤して階段を上がって行くと、高いブロック塀のねこけもの道の

向こう、以前にもいた同じ位置にバットマンがいて、そん時と同じように

何か下の方の向こうを熱心にのぞき込んでいた。

また、おーいバットマン、って何度か呼びかけてみたけど、全然こっちを

向きゃーしなかった、やっぱり。


ベランダでたばこを吸ってた朝1のシャンさんに聞くと、バットマンは

上がって来てないようだったけど、めずらしく鈴白が数カ月ぶりにやって

来たらしかった。

鈴白は丸まる太っていて、シャンさんが事務所の中で、来てるなー、って

思ってるうちに、いつの間にか帰っちゃっていたようだ。

エサをほんの少し食べた跡があったって。

どっかでのんびり生活してるんだけど、そうだ、あの人たちは元気かな、

って、ちょっと思い立って遊びに来たのかも知れない。


そーいやー、先週はちょっとビールの買い足しに出かけようとして、階段を

下りかけてふと右手を見ると、ベランダのフェンスの外側のへりにこれまた

久しぶりにつーとんが伏せていて、こっちを見てなつかしそうな顔をして、

私に目であいさつした。

おー、元気かい、って言ったら、目で、うん、って言ったので、そのまま

出かけて、帰って来たら、もう彼も消えていた。


こんなふうに、われわれのつきあいは水のようにクールで、ハードボイルド

の主人公たちのようにかっこいいのだ。


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