8/12ののらねこ
      文は田島薫



朝、来て、どうせ誰もいないだろうと思いながら、あたりを見回すと、

ベランダのはるか奥に若白が横になっていた。

おおーっと、声をかけると無表情でこっちを見ている。

皿にエサを入れて手招きしても、表情も体の位置も変えない。


湯を湧かしたり、掃除したりして外をのぞいてみると、前より

こっちに近づいた場所に移動して横になっていた。

そこは涼しくはなく、陽があたってきたりする場所なのに

じっとしている。


団扇を持って来て少し近づき、あおぐまねをしてみたら、

おおっと、びっくりしてたちあがり、また奥へ行ってしまって、

こっちを無表情ににらんでいる。

あついだろーあおいでやろーと思ったのに、と言うと少し

警戒をといたようにその場にすわりこんだ。


また、少しして窓から外を見てみると若白の姿が見えない。

帰ったのかなとドアを押して外へ出ようとすると、足元で

若白がびっくりした顔で、今にも逃げそうにこっちをにらんでいる。

なれてるんだか、なれてないんだか、よくわかんないヒトだ。



戻る